江戸時代に中国山地一帯で栄えた「たたら製鉄」。その伝統はいまなお当社を始め、多くの鉄づくりの現場に受け継がれています。その「たたら製鉄」の作業工程などを描いた広島県の重要文化財「紙本著色隅屋鉄山絵巻(しほんちゃくしょくすみやてつざんえまき)」が6月2日~3日に広島県山県郡安芸太田町加計の川・森・文化・交流センターで、30年ぶりに全編公開されました。「加計隅屋鉄山絵巻」としても知られるこの絵巻は、江戸時代後期の作品といわれ、燃料の木を切り出す作業から炎を上げる炉に砂鉄を投じる場面、真っ赤な鉄の塊を出す工程などを描いた上巻、さらに従業員の暮らしやたたら製鉄の道具類を記録している下巻の2巻で構成されています。精錬した鋼を取り出す場面では、紙を上部につぎ足して作業場全体が描き込まれています。当時の「たたら製鉄」の状況を極めて写実的にいきいきと表現した珍しい作品であると同時に、かつてこの近辺が全国的な鉄の生産地であったことを伝える貴重な歴史資料です。今回の公開イベントは、鉄文化を生かしたまちづくりを目指して、町観光協会や町、陶芸家などで構成された町おこし団体「安芸太田たたらツーリズム実行委員会」が所蔵家の加計正弘さんに公開を依頼して企画されました。「たたら製鉄」の職人たちの息づかいを現代に伝える製品として、当社は湯牧民かまどんを展示させていただきました。近くの鍛冶屋館では、若手の鍛冶職人の作品展も行われ、「たたら製鉄」の火は脈々と伝承されていることを感じました。
主催:安芸太田たたらツーリズム実行委員会