お客様と共に進化する”定盤”
ここに1枚の写真があります。
この写真は、EV (電気自動車) のベンチャー企業であるG社様の本社兼テクニカルセンターの1階フロアの中央に設置した定盤の前で、据付工事が終わったあと撮って頂いた写真です。
「定盤の写真、撮らせてもらっていいですか。」という申し出に、「それなら、当社の代表車を定盤の前に置いて撮りましょう。」G社のAさんはそう言うと、片隅にカバーで覆われた車を移動させ始めました。Aさんは定盤のお問い合わせを頂いたときから、仕様固め、発注、立会検査、据付けまで、お付き合い頂いた方です。
Aさんからは仕様を決める際にいろいろと要求を受けましたが、その中で一つだけ、我々がその性能を保証することが難しいと思われる部分がありました。
それは、将来3次元測定機(レイアウトマシン)を導入できるように、両サイドにガイド用の溝を加工して欲しいというものでした。このガイド溝は、3次元測定機を横方向に移動させるときの基準となるもので、測定精度に大きく影響するものです。その加工精度(真直度)は厳しく、我々にとっては、できるかどうか分からないレベルのものでした。本来なら、レイアウトマシンはその測定精度を保証するために、3次元測定機と溝加工された定盤とセットで販売されているものです。
そのことをご理解頂き、できれば溝加工は仕様から外して頂くようにお願いするために、上司と一緒に訪問し説明しました。その時Aさんは、「全て理解しています。ガイド溝の精度は検査結果を報告頂くことで良しとします。」
お客様に背中を押される形で、我々は溝加工にチャレンジすることになりました。数回試作を行い、加工条件を決めていきました。苦労はしましたが、結果、基準内の精度で溝加工を行い、納めることができました。
後日、Aさんから写真と共に送られてきたメールには、「どの分野であっても、プロの仕事を見させて頂くのは大変刺激になり、楽しかったです。」と書かれていました。
お客様の信頼を得て、お客様と共に進化していけることは、我々にとって最高の喜びではないかと思っています。